司法書士の加陽麻里布です。
街を歩いていたら合資会社〇〇商会という古めかしい会社を見かけたことがあります。
会社法の勉強をした方ならわかるかもしれませんが、一般には合資会社というのはなじみが薄いですよね。また、合資会社と似たもので合名会社というものもあります。合名会社?合資会社?とはどのようなものか見ていこうと思います。
合名会社も合資会社社員の責任が重く、社員の信用が重要な会社と言えます。ここで、社員というと従業員のような印象を持ちますが、会社法では持ち分の所有者のことを言います。株式会社では株主のことになります。これはなかなかの違和感!
さて、本題に行きます。
①合名会社
合名会社は無限の責任を負う社員が(無限責任社員)によって構成される会社です。会社の財産で弁済ができないときは社員は私財をなげうって弁済をする必要があります。そのため、社員の私財が信用につながるとともに、社員にとっても会社はその人そのものと言える効果を持ちます。
戦前の財閥本社は合名会社や次に述べる合資会社の形態をとっていました。三井合名会社や三菱合資会社、住友合資会社、合名会社大倉組などがありました。明治時代からの経済成長は財閥家族の資力の信用によるところもあったのではないかと考えられますね。
②合資会社
合名会社と似ているのですが、有限の責任を負う社員がいるところが違いです。有限責任社員はあらかじめ定められたの範囲内で責任を負うので、その点では安心感がありますね。ただし、無限責任社員1名以上と有限責任社員1名以上が必要ですので、就任してくれる人を見つける必要があります。
合名会社や合資会社は制度としては残っており、数千の会社がいまだにあると言われています。ただし、新規でこれらの会社を設立するケースは非常にまれです。私も依頼を受けた経験はありません。無限の責任を負うという時点で資金調達方法も様々に発達している現在の経営感覚には合わないものになっていると言えます。
なお、現在にも無限責任が広く残っている業界があります。それは士業です。
監査法人、税理士法人、弁護士法人、そして、司法書士法人も無限責任社員が構成します。これは士業については個人と法人の境目が難しく所有と経営も分離していないためと思われます。
しかし、士業の法人化も個人ではなく組織としての運営が求められる現代社会の要請によるものです。パートナーの失敗で、無限責任を負わされるのはなかなか厳しいですよね!
本日は合名会社と合資会社について紹介してみました。